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デイジー

気持ちがいいと、イビキをかきます。

異常値ですよ

「何か召し上がったんですよね」

先生は、おっしゃった。

「食べてないです」

そう答えたものの、先生は、にこやかだった。

通院している病院での採血の結果、中性脂肪が五一◯だった。正常値が三◯から一四九だから、三〇の値の人からすれば一七倍の脂を背負って生活していることになる。

これまでも、何度か採血をしたことがあり、その度に「中性脂肪が高い」とは言われてきた。

これまでの検査は、診察時に「それでは検査しましょう」という感じだったので、検査値が高く出ても「あ、朝食食べましたね」と言われただけだった。確かに、朝食にジャムをつけたパンを食べたり、カフェオレを飲んだりした。

だけど、そのときの検査は「来月、採血します」と連絡があったので、三日目から油物、甘い物を我慢して、朝食も食べなかった。「何か食べたんでしょう」と、疑われるのも悲しいけれど、食べなかったのは自分がよく知っている。

ネットで検索すると、中性脂肪五一◯が出た男性が、お医者様から「死にますよ」と、宣告された、などという記事があった。

わたし、死ぬの?

これまでも、四八◯とか五◯◯とか出ていたけれど、「何か食べたんでしょう」で、済まされてきたが、今度は、済まされない。食事制限をしていたのは、自分がよく知っている。

わたしの身体、どうなってるの?

四十代半ばなので、閉経前の脂質異常なる症状もあるとネットで見たけれど、若い頃から中性脂肪は高かった。

「体質です、体質」

不安な表情を浮かべたわたしを気遣ってか、先生がおっしゃった。脂肪を体内で分解できない症状があると、これまた、ネットで見た。とても長い名前の症状だったけれど、先生が「体質です、体質」と、明るく言うので、それほど重いものではないのかもしれない。 

血圧でも、異常値が出たことがある。下が三八で、上が六◯だったか、八◯だった。測定した人がびっくりして、もう一回測ったけど、数字は変わらなかった。再検査で、翌日、病院で測っても、数字はさほど変わらなかった。

「夜寝る前に何か食べて、朝、食べないでいるんでしょう」

年配の女性のお医者様が、面倒くさそうに言った。

この低血圧には、心当たりがあった。十八で上京してきた当初で、慣れない生活の中、朝どころか、夜も昼も、ほとんど食べてなかった。

こういう異常値が出るというのは、確かに、体調が悪い。ものすごく具合が悪い。

子どもの頃から、いつもだるかった。だるいとか、疲れているとい言うと、怠けていると教師は言う。下手に運動が出来たので、ちょっと休むと、ズルをしたと同級生が言う。

歩いているだけで、鉛が足についているような感じだった。作業をしていても、だるくなって嫌になった。飽きっぽい性格なんだと思っていた。友達と出かけても、だるくなって楽しくなかった。自分は協調性が無いんだと落ち込んだ。

超がつくネガティブな性格になったのは、異常な中性脂肪のせいだったのだろうか。

先生は、中性脂肪を排出するお薬を処方してくださった。

日本人女性の平均寿命は八十六歳だそうだから、あと四十年、これからのネガティブ思考は、中性脂肪のせいに出来ないな。